先日、グーグル日本法人の元社長、村上憲郎さんと日経新聞社のホールで公開対談したが、その事前打合せの席で2人が不思議に思ったことがある。それは最近、日本のデータセンターが関西周辺の西日本で拠点を増強している、というニュースが頻々と出てくることである。首都圏にラック数で74%も集中しているという日本のデータセンターの配置は極めていびつだが、その是正のために関西地区を中心に西日本を増強するというのはナンセンスだというのが一
致した意見である。
必要なのは目玉を2つにすることではなく、全国に分散することである。北海道、北陸、東海、九州、沖縄と分散配置して、高速インターネットで結び付けて、網の目のような配置にすることではないか。各地にデータセンターと、それをメンテナンスするサービス事業者を育てる。地産地消の概念を情報産業に適用するのは当然である。
集中化を進めてきた人たちの言い分は「効率性」である。集中したほうが効率的だという発想である。これは間違いである。クラウドはインターネットの進化形だが、集中を目指している、というのは誤解である。そもそも、アマゾンにしても、グーグルにしても、グローバルに分散化することで、どこのセンター、どこのサーバーを使用しているか、意識しないことがクラウドであることを指摘している。個々のセンターが大規模である、というのは、集中化を目
指したものではない。
インターネットは元来、ネットワークによって情報資源、通信資源を分散化して、集中による被災リスクを軽減する目的で開発された。リスク回避のためのバックアップが、基本的な思想に組み込まれている。冗長度が高く、安全性のために非効率は仕方がないと思っていたら、逆に効率がよく、効果に対する投資コスト、運用コストは飛躍的に下がって、経済的な情報通信インフラに発展してしまった。分散はイコール非効率、という図式は当たらない。ぜひとも、各地に分散するクラウドを目指して、データセンターの配置を再検討してもら
いたい。