「ものづくり大国=日本」は復活できるのか?

「ものづくり大国=日本」は復活できるのか?

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 テレビ、家電、パソコン、半導体、DVD、液晶~~世界を席巻した日本製品が、追い上げてくる新興国の勢いに押されて次々とその生産国首位の座を明け渡してきた。その原因はどこにあるのか。業種別に日本の製造業が劣勢に追い込まれていった経緯を振り返ってみると、最も影響を与えているのは「為替」の円高進行である。1970年初頭の固定制度の時代は1ドル=360円だったから、現在の80円近辺の水準は4.5倍に相当する。コストを5分の1くらいに圧縮しなければならないのだから、国際的競争力を維持するのは至難の業である。実際、技術が安定した製品が次々と国際競争力を失って日本から姿を消していったように思える。

  ただ、5分の1と言っても、土地代、家賃、人件費、電気料金・燃料費、原料費、水使用料などすべてを5分の1にしなくてはいけない、というものではない。確かに、土地代や人件費は簡単には下げられない。しかし、資源小国の日本は、原料や燃料は輸入に頼っているので、円高になればその分、コストが下がる。中間事業者が円高差益を吸収してしまわなければ、生活費が下がって人件費の上昇も抑えられる。そういう円高メリットを考慮すれば、日本企業がコスト圧縮に実質的に努力するのは、2分の1くらいの領域だろうか。

  現場従業員の士気高揚、製造プロセスの革新、製品設計の改良による無駄の排除、情報技術による管理技術の向上などで、2分の1のコスト圧縮が可能か否か。それが40年間で実現できたか、どうかである。残念ながら、40年間という長期の時間をかけても、このハードルは高かった。特に製造プロセスの革新や製品設計の改良、情報技術による管理技術の改良などの努力は、新興国がすぐに模倣して追いついてきた。

  とはいえ、出口がないわけではない。為替の円安への転換もその一つである。円高のうちに海外の企業を買収して国際的な流通体制を構築して置き、円安に移行したら、生産基地を日本にシフトする、という手法である。そのためには割高でも、日本の生産能力を活かしておかなければならない。また、円安になって輸入コストが上がっても耐えられるように、エネルギーでは地熱や風力、太陽光その他の「国産エネルギー」を開発して置く。レアメタルなどの資源は、ハイテク製品の廃棄物から回収する「都市鉱山」を実現して置かなればならないだろう。そんなことを考えさせられた企画だった。

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