クラウドが変える世界

クラウドが変える世界

 クラウドが変える世界
 武田隆 エイベック研究所代表取締役
 日本経済新聞社 1600円+税
 2011年8月25日

 クラウドも、ようやく日本の具体例が出てきた。経営者としても第一線で活躍しながら理論家でもある著者の幅広い知識と最新の情報が詰まった本である。

 著者はNTTデータで長くユーザー企業の変革の仕事を推進してきた。NTTグループは基本的に通信会社だが、NTTデータは少し性格を異にして、SIヤーの性格が強い。ユーザーにソリューションを提供する会社である。そのリーダーとして、著者は様々な企業の経営変革を手掛けてきた。大手SIヤーに比べればやや出遅れた後発企業だ。その劣勢を跳ね返すためには、先例を研究し、その前を行く変革のイメージをユーザー企業に提示しなければならなかった。いつも新しい技術、新しい手法に注目し続けなければならない。

 そうして現代、企業経営の基礎を揺るがす最新のインフラ、最新の経営手法を提供する強力な技術がクラウドであり、クラウド技術である。

 この本の面白さは、単なる新事例集ではなく、経営革新の分野、経営革新の本質は何か、それぞれテーマ別に整理し、新しい意味を見出しているところだ。グローバル事業展開、サプライチェーンマネジメント、M&Aなどのキーワードでクラウドの果たす役割を明らかにし、医療、学校、大学、電子自治体、災害への対応などのキーワードで、国際的な比較では明らかに後れてしまった日本社会が、次の時期に再び世界と肩を並べられるきっかけはクラウドである、と解明してくれる。

 いつも新しい現象が始まるとそうであるように、「クラウド」の言葉を使う人には思い思いの異なった理解から、随分多様なクラウド像ができあがって、いささかの混乱があった。しかし、実例が豊富な本書のような構成であれば、クラウドというのは何なのか、実像に迫ることができる。一読を勧める。

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